近年のNBAは試合を見ているとものすごい数の3ポイントが放たれます。ヒューストン・ロケッツは1試合で50本近く打つこともありますよね。
全体のフィールドゴールの試投数が90本程度なことが多い中で、フィールドゴールの半分以上を3ポイントが占めてることも珍しくなくなってきました。
それはただ「3ポイントの方が得点が高いから」ではありません。たくさん打つのには、たくさん打つ根拠があります。
この記事ではその根拠を様々な数字を用いて具体的に話していきます。
目次
次々と塗り替えられるNBAの3ポイント記録
ではまず、2014-15シーズン以降塗り替えられてきた、3ポイントの記録についてご紹介しましょう。(18-19シーズンまで)
- 18-19シーズン:クレイ・トンプソンが1試合の成功本数を14本に更新(2018-10-29)
- 15-16シーズン:ステフィン・カリーが年間400本超えの成功
- 16-17シーズン:ロケッツが1試合で史上最多61本の試投※OTを含めた場合の最多試投数は70本(2016-12-16)
- 18-19シーズン:ロケッツが1試合の最多成功記録を27本に更新(2019-04-07)
- 16-17シーズン:キャブスがレギュラーシーズン史上初2試合連続20本成功※同様の記録を他4チームも記録
- 16-17シーズンから:シーズン最多3ポイント成功数の記録をロケッツが3シーズン連続で更新(1,181本→1,256本→1,323本)
こうした記録だけを見ても、どれだけNBAが3ポイントを打つようになってきたのかがわかりますよね。
ちなみにですが、2005-2006シーズンにレイ・アレンが記録した1シーズンの最多3ポイントシュート成功本数は、2012-13シーズン以降どんどんと更新されるようになってきました。
200本台後半を記録することすら難しかったのですが、15-16シーズンにはステフィン・カリーが400本の大台へと到達。1試合当たり4~5本を決める計算となります。
3ポイントが打てるインサイドプレイヤーの増加
[instaEmbed url=”https://www.instagram.com/p/B4x2LnTpQjS/”]3ポイントの記録が塗り替えられてきたことはもちろんのこと、3ポイントシュートを打つことができるインサイドのプレイヤーが増加してきたのも、昨今の「バスケ」のトレンドを物語っていると言えるでしょう。
08-09シーズンと、18-19シーズンとで、3ポイントシュートを100本以上打ったセンター(※C/Fも含む)の数を比べてみると、08-09シーズンはわずか6人だったのに対し、18-19シーズンは22人へと急増していることがわかりました。
ガードのように3ポイントシュートの成功率が40%を超えるプレイヤーもいますし、500本以上3ポイントシュートを放っているプレイヤーもいますし、どんどんと3ポイントシュートを打つインサイドのプレイヤーが増えているとわかりますよね。
現在は、3ポイントシュートを打たないインサイドプレイヤーの方が多く見られるようにも感じられ、純粋にインサイドだけで勝負するプレイヤーは減っているような気がします。
3ポイントシュートが増えているのは得点期待値が高いから
では、なぜこのように3ポイントシュートが主流になってきているのでしょうか?それは得点期待値にあると言えるでしょう。
得点期待値を、「リング周り(ノーチャージアーク内)」「ミドルシュート」「3ポイント」の3つに分けて分析してみましょう。まずは、シュート成功率から見ていきますね。
18-19シーズンのデータを元にしています。
各エリアからのシュート成功率
「リング周り」「ミドルシュート」「3ポイント」の3つのエリアからのリーグ全体のシュート成功率は、以下の通りです。(参考:Basketball-reference)
- リング周り・・・・・65.8%
- ミドルシュート・・・40.7%
- 3ポイント ・・・・・ 35.5%
「リング周り」というのはノーチャージアークの中を指しており、「ミドルシュート」はペイントエリアから3ポイントラインまでの2点エリア。3ポイントは3ポイントラインよりも外ということになります。
今回はよりわかりやすくするために、小数点を四捨五入して得点期待値を出していきましょう。
各エリアからの得点期待値
先ほど紹介した各エリアからのシュート成功率と、それぞれのエリアから決めるシュートの点数を元に、得点期待値を算出してみました。
- リング周り・・・・・1.32点(2×0.66)
- ミドルシュート・・・0.82点(2×0.41)
- 3ポイント ・・・・・ 1.08点(3×0.36)
上記の通りとなります。あくまでも数字上の話ではありますが、ミドルシュートよりも3ポイントシュートの方が、1本のシュートを打つ上での得点期待値が高いことがわかりますよね。
この結果を元にシュート1本あたりの得点期待値を高い順に並び替えてみると、以下の通りとなります。
- リング周り
- 3ポイント
- ミドルシュート
3ポイントシュートは、リング周りのシュートについで得点期待値が高いことがわかります。これが、3ポイントシュートの本数が急増している理由の1つでしょう。
得点期待値からわかるNBAのシュートセレクション
たった今得点期待値について紹介してきましたが、このことからNBAのシュートセレクションに関する2つのポイントが見えてくるのです。
リング周りのシュートは最優先
これは、得点期待値を物語る必要もないほどに当然のことかもしれませんが、リングに近い距離からのシュートは積極的に打つべきなのです。
シュートチェックが激しくなることは当然のことですが、シュートは入りやすくなりますしファールをもらってフリースローを打つチャンスも得ることができるようになります。
得点期待値を考えると、とにかくリングに近いところでシュートを打つことが最優先と言えるでしょう。
ミドルシュートよりも3ポイントシュートを優先
先ほどの得点期待値を見てみると、ミドルシュート(0.82点)よりも3ポイントシュート(1.08点)の方が高いことがわかりましたね。
単純な距離だけで見てみると、ミドルシュートの方が近くから打っているのでそれだけ得点しやすそうにも見えますが、シュートの成功率を見てみると大差はありません。
しかしながら、3ポイントシュートは1本打つだけで、およそ1.08点が見込めるわけです。そう考えてみれば、中途半端な距離のミドルシュートを打つよりも、3ポイントシュートを打った方が効率が良いとも言えるわけです。
ロケッツの3ポイントシュートの多投は得点期待値の影響?
爆発的なオフェンス力を武器にNBAをかき回しているヒューストン・ロケッツ。
特に3ポイントシュートを多投しているチームなのですが、先ほど紹介した2つのシュートセレクションを忠実に守っていることが、データから明らかになっています。
こちらは、18-19シーズンのロケッツのショットチャートです。(※四角が大きいほどたくさんのシュートを打っていることを表しています。)画像を見るだけでも、リング周りと3Pシュートが多いことがわかりますよね。
ちなみに、全7,164本のシュートのうち、リング周り(※ペイントエリア全体)のシュートが3,000本、3ポイントシュートが3,716本、ミドルシュートはわずか448本となっています。
全体の実に93%を、リング周りと3ポイントシュートが占めているわけです。ハーデンやタッカー、ゴードンの3ポイントシュートや、カペラのダンクなどが多い印象もあるのではないでしょうか。
ロケッツは、得点期待値を考えた上で3ポイントシュートを打っていると言っても過言ではないでしょう。
マイク・ダントーニHCはずっと3ポイント主体というわけではない
[instaEmbed url=”https://www.instagram.com/p/B318i95lA0C/”]ロケッツの1シーズンにおける3ポイントシュートの試投数が3,000本を超えてきたのは、16-17シーズンからなのですが、これはヘッドコーチ(HC)にマイク・ダントーニが就任したことが大きな理由でしょう。
マイク・ダントーニがHCになった16-17シーズン以降、3シーズン連続で試投数・成功数共に伸びており、得点期待値が大きく関係しているのではないかと僕は見ています。
というのも元々オフェンス重視のHCとして知られているダントーニですが、ロケッツのHCを務めるまではリング周り・3Pシュート中心のオフェンスを組み立てていたわけではないんです。
16-17シーズンにロケッツでHCを務める前に率いたのが、13-14シーズンのレイカーズ。その13-14シーズンのレイカーズのショットチャートが以下の通りです。
先ほど見ていただいたロケッツのショットチャートと見比べてみても、ミドルシュートの部分でシュートを打っている本数が多いことはなんとなくわかるのではないでしょうか?
全6,974本のシュートのうち、リング周り(※ペイントエリア全体)のシュートが3,039本、3ポイントシュートが2,026本、ミドルシュートは1,909本となっています。
リング周りと3ポイントシュートは、シュート全体の72.6%ですので、ロケッツの割合と比べても20%近く低いのです。。
このことから、ダントーニは元々リング周りや3ポイントシュートを中心にしていたわけではなく、ロケッツのHCに就任するに当たり得点期待値に目をつけたのではないかと推測します。
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まとめ:NBAの3ポイントが多い理由は得点期待値にある
今回の記事ではNBAの3ポイントが年々増加傾向にある事実を裏付けるために、データを用いながら紹介してきました。
ただ3ポイントの方が得点が高いからではなく、得点期待値が高いことが3ポイントが増加している1つの理由だとわかっていただけたのではないでしょうか。
こうしたデータも頭に入れながら試合を観てみると、さらに楽しくNBAを観られるかもしれません。