華やかな生活を送っているように見えるNBAプレイヤーや、元NBAプレイヤー。僕たちが「NBAプレイヤーっていいな」と思っていても彼らは引退すると厳しい世界に直面します。
それが「破産」するということ。莫大なお金を稼いでいるNBAプレイヤーがなぜ破産をしてしまうのでしょうか?
今回はそんな疑問に応えるための記事を書きました。
目次
NBAプレイヤーは破産する?!
想像したこともないでしょう。NBAプレイヤーが破産するとは。しかし実際にNBAプレイヤーは引退してからの5年で、およそ60%が、50歳になるまでに90%が破産するというデータがあるのです。
(参考:https://blog.mint.com/how-to/from-stoked-to-broke-why-are-so-many-professional-athletes-going-bankrupt-0213/、https://moneyforward.com/mf_blog/20130224/01-2/)
どのようなことが原因で破産をするのかを紹介する前に、ここでNBAプレイヤーの平均的なキャリアやサラリーについて紹介していきます。
NBAプレイヤーの平均的なキャリアやサラリー
まず初めにNBAプレイヤーの平均的なキャリアやサラリー、生涯獲得賃金について説明していきます。
- 平均キャリア:約5年
- 平均サラリー:約5億円
- 平均生涯獲得賃金:約26億4千万円
コービー・ブライアントやダーク・ノヴィツキー、ケビン・ガーネットなどのように20年近くNBAでプレイをするケースもあるのでNBAプレイヤーとしてのキャリアは長いと思われがちですが、実は平均的なキャリアは5年ほどと思ったよりもかなり短いのです。
しかし5年でもいい方で1年目にNBAからいなくなるプレイヤーもいます。
平均サラリーも先ほどと考え方は同じで、高額のサラリーをもらうプレイヤーもいれば、ベテラン最低保障額で2億円ほどの年俸になるプレイヤーもいるので、振り幅はかなり大きいです。ちなみにですが、日本のBリーグのサラリーは240~840万円ほどで、NBAと比べると桁違いに低いことがわかります。
生涯獲得賃金の平均は26億4千万円となっています。
NBAプレイヤーが破産する5つの理由
NBAプレイヤーが破産する大きな理由として以下の5つが挙げられます。
- 大規模な浪費
- キャリアが思ったよりも短い
- 財務知識の欠如
- 投資知識の欠如
- 「悪い」アドバイザーにお金を預けてしまっている
大規模な浪費
1つ目は大規模な浪費です。
先ほども挙げたのですが、平均の年俸で5億円、生涯獲得賃金で26億4千万円も稼いでいるため、そのお金が底を尽きないと思っているのかどんどんと浪費していきます。
仮に平均年俸と同額である5億円を稼いだとしても、代理人や税金関係の支払いで2億円はなくなっていきます。しかもそれが思っている以上のスピードで進んでいくため、お金が口座からなくなっていく原因となっているのです。
キャリアが思ったよりも短い
2つ目はキャリアが思ったよりも短いということです。
NBAプレイヤーの平均的なキャリアは約5年。彼らがチームにいられるいわば「年数」は非常に短いです。
NBA界を目指しているプレイヤーは数多くいますし、彼らに目をつけている敏腕スカウト、メディアは数多くいます。NBA界を目指しているプレイヤーは「使えなくなったプレイヤーの代わり」となりますし、敏腕スカウトやメディアは「使えなくなったプレイヤーの代わり」を探しているとも言えます。
代わりとなるプレイヤーが何万といるのです。だからこそチーム側が使えないと判断したら、例えプレイヤー自身が「まだ闘える」と思っていてもチームがいらないと思えば放出または解雇されます。そのことを考えていないプレイヤーが多いということです。
もちろん「キャリアを長くしてNBAでずっと活躍し続けたい」と思う気持ちはもちろん必要です。しかし客観的に自分自身の実力を見つめてプレイヤーとしても1人の人間としても対策を講じておくことが必要なのですが、できていないケースが多いということです。
財務知識の欠如
3つ目は財務知識の欠如です。
NBAをはじめとするプロスポーツリーグでは、アスリートのための金融に関するセミナーなどを今では提供していますが、それらはまだ「理解されていない問題であり、伝わっていない。」と関係者は話しています。
なぜ彼らに財務知識が欠如しているかというと、お金に関する勉強を全くしていないわけです。アスリートは多額のお金を費やしているビジネスマンを見ていて、そのビジネスマンと同じことをすることができると感じているという点に問題があります。
実際にはビジネスマンはお金の勉強を生活を通して行なっていますが、NBAプレイヤーはバスケを練習したり勉強したりそのほかの遊びをしているため、お金の勉強を全くしていないのです。
お金のことを知らないNBAプレイヤーがお金のことを知っているビジネスマンと同じことができるわけもないのです。
投資知識の欠如
4つ目は投資知識の欠如です。
エド・ブトフスキーという財務顧問によれば、
アスリートのように若くて健康体で財政面の知識のない人は最もターゲットになりやすい。不動産や悪いプライベート資金としての多額の金銭投資は個人の金融危機を招く1番大きな原因。
だというのです。要は「悪い投資話にのりやすい」ということです。
さらにブトフスキー氏はアスリートとしてよりも、こうした「不動産投資」などの種類のお金の稼ぎ方について聞かれているそうです。悪い投資話に耳を傾けることで、余計な知識を得ようとしてしまうことが原因です。
相談するならまだしも、相談をせずに巨額のお金を投資に回してしまうことが破産の原因の1つです。
「悪い」アドバイザーにお金を預けてしまっている
5つ目は悪いアドバイザーにお金を預けてしまっているということです。
これはNBAではなくNFL(National Football League)の話ですが、NFL選手協会によると、78人以上のプレイヤーが悪いアドバイザーにお金を預けた結果、1999年から2002年までの間に合計で約42億円ものお金を失ったのです。
しかも彼らは、その失った約42億円ものお金がどうなったのかを知らないというのが現状です。
今までに破産したNBAプレイヤー
実際に、今までに破産してしまったNBAプレイヤーを2人紹介します。
アレン・アイバーソン
1人目は、知らない人はいないであろうスーパースター、アレン・アイバーソンです。現役時代は76ersで大活躍。新人王、得点王4回、シーズンMVP1回、オールスター10回出場を誇り、現役を退いてから76ersは彼の背番号である#3を永久欠番としました。
そんなNBAプレイヤーとしては輝かしい実績を持ち、生涯獲得賃金だけで実に1億5450万$(日本円にするとおよそ154億円)を稼ぎ、「リーボック」とのスポンサー契約も含めると、巨額のお金を稼ぎましたが、アイバーソンは自宅を差し押さえられ離婚裁判の弁護費用を払っておらず弁護士から返済訴訟を起こされたなどの事実があります。
破産したアイバーソンですが、生涯契約を結んでいるリーボックから、年間で80万$を受け取り、また、アイバーソン自身が55歳になる2030年には3200万$が受け取れるとのこと。
The lifetime deal awarded Iverson $800,000 annually and includes a $32 million trust fund that the player can access when he turns 55 in 2030.
訳:アイバーソンの生涯契約には、毎年受け取ることができる80万$と、彼が55歳となる2030年に3200万$が受け取ることができる信託基金が含まれている。
引用:https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-10-12/allen-iverson-s-lifetime-deal-is-still-working-out-for-reebok、訳:引用者
アントワン・ウォーカー
2人目はアントワン・ウォーカーです。ある程度NBAを知っている人なら聞いたことのある名前なのでは無いでしょうか。ウォーカーは、セルティックス時代にオールスターに3回出場、2006年にはNBAチャンピオンに輝くなど活躍をしていました。
最後にNBAのチームと契約していたのは2008-09シーズンのグリズリーズですが、彼は2010年に自己破産申請を出しました。彼はキャリア12年間の間に1億800万ドル(日本円にするとおよそ108億円)を稼ぎましたが、無類のギャンブル好きでお金をどんどんと失い、NBAプレイヤーなら誰もが喉から手が出るくらい欲しいチャンピオンリングまでも売却せざるを得ない状況に陥りました。
ギャンブル以外にも、車や宝石、家の購入、友人に現金をプレゼントするなど派手な生活をしていたのです。
当時のことをウォーカーは、
“I gave them whatever they wanted and spoiled them. You can’t do that,” Walker said. “It ended up being an open ATM throughout my career.”
訳:彼らにはなんでも欲しいものを与えていたが、それによって俺は彼らを甘やかしてしまったんだ。結局キャリアを通して、俺はATMだったんだ。
引用:https://money.cnn.com/2015/07/24/investing/antoine-walker-nba-bankruptcy/、訳:引用者
と語っています。また、破産に陥った大きな原因として先ほどギャンブルを挙げましたが、所有していた不動産会社の倒産も原因の1つだったようです。
今は自身の体験を教訓にしてほしいとの思いから、稼いだお金の取り扱い方をアスリートに教えているようです。
(参考:https://money.cnn.com/2015/07/24/investing/antoine-walker-nba-bankruptcy/)
プレイヤーとビジネスマンの二足の草鞋を履くプレイヤー
現役で活躍しているプレイヤーの中には、ビジネスマンとして活躍している「二足の草鞋」を履くプレイヤーがいます。そんなビジネスマンとしての側面を持つプレイヤーを3人紹介します。
トレバー・ブッカー
1人目は、トレバー・ブッカーです。ブッカーは2019年9月現在31歳のプレイヤーで、PFとして活躍しています。2010年~2018年にかけてNBAを舞台に戦っていました。
自身のツイッターのプロフィールには「Entrepreneur(訳:起業家)」や「Partner at JBFitzgerald Venture Capital(訳:JBフィッツジェラルドベンチャーキャピタルのパートナー)」と記載していますので、正真正銘のビジネスマンと言えるでしょう。
JBフィッツジェラルドベンチャーキャピタルのホームページを見てみると、トップページにトレバー・ブッカーの顔写真が掲載されていますので、かなり重要なポジションについているのかもしれません。
不動産、スポーツ学校や私立高校、レコード会社、ベンチャーキャピタルなどを所有しています。
2017年の7月にはNBPA(ナショナル・バスケットボール・プレイヤーズ・アソシエーション)の企画したツアーに参加し、サンフランシスコやシリコンバレーを訪れたようです。
彼らはコンピューター関連のサービスを提供している「IBM」や半導体素子メーカーの「Intel」、VRを使ったトレーニングシステムを開発する「STRIVR」などに訪れたとのこと。
特にVRを使ったトレーニングシステムを開発する「STRIVR」の訪問は、ブッカー自身が将来的にもバスケットボールをはじめとするスポーツ界へ、ビジネスマンとして貢献することを考えていることの表れかも知れませんね。(NBPAの企画したツアーなので、ブッカーの意志とは関係がないかも知れませんが・・・。)
ブッカーは以下の通り話しており、ビジネスマンとしての成長にも貪欲なのです。
「我々は、より多くの選手が自分の持つリソースを活用し、ベンチャービジネスや何か他のことを始めることを願っている」
「我々はお互いのビジネスで協力し合うことができる。なにかしようと誓い合った」
引用:https://www.businessinsider.jp/post-100431
18-19シーズンからはアメリカを離れ中国でプレイしているブッカーですが、自身のビジネスのためにも、プレイヤーとしての力を証明するためにも、またアメリカに帰ってきたいと思っているのではないでしょうか。
(参考:https://www.businessinsider.jp/post-100431)
アンドレ・イグダーラ
[instaEmbed url=”https://www.instagram.com/p/BzOela2ncEV/”]2人目は、14-15シーズンはファイナルMVP、16-17シーズンもゴールデンステイト・ウォリアーズを優勝に導いたアンドレ・イグダーラです。17年の夏にウォリアーズと3年4800万ドルの再契約を交わした彼ですが、この再契約の裏にはプレイヤーとしてではなく「ビジネスマン」としての一面を垣間見ることができたのです。
[twitterEmbed url=”https://twitter.com/ClutchPointsApp/status/901122674956660738″]ウォリアーズが本拠地としているオークランドの周辺は「ベイエリア」と呼ばれており、南端は世界の超有名なハイテク企業が集まる「シリコンバレー」として名前が知られているエリアです。
そんなベイエリアに本拠地を構えているウォリアーズと、2017年に再契約を結んだイグダーラですが、自身が参入しているベンチャービジネスが、再契約に深く関わっているようなんです。
33歳になるスィングマンのイグダーラは、シリコンバレーの中心にある彼のベンチャービジネスが市場に参入していて、ベイエリアにも投資されている。
引用:https://ameblo.jp/caco34/entry-12304768635.html
密接な関係がイグダーラを再契約へと導いたと言われています。当時、スパーズ、キングス、レイカーズ、76ers、ロケッツからもオファーが届いていたようですが、最終的にはウォリアーズとの再契約に至りました。
(参考:https://clutchpoints.com/warriors-news-connection-silicon-valley-part-andre-iguodala-re-signed-warriors/)
ステフィン・カリー
3人目はウォリアーズに所属するスーパースター、ステフィン・カリーです。彼のプレイヤーとしての顔は知っている人が多いので割愛します。
彼はつい先日(日本時間2017年11月17日)、オンラインコースでのバスケ指導を始めることにしたのです。カリーのオンラインコースは、初級・中級者向けの内容で、選手の技術向上を手助けしたいというカリーの想いの現れ。このオンラインでのバスケ指導についてカリーは、
チーム練習後にやる反復練習には基礎が付き物。フットワークやバランス、身体の動きの強調が求められる。それらが身につくと自信がつく。その後に、少しばかり難易度の高いことにトライすればいい。『Master Class』のコースを通じて、自分のプレイを理解してもらえたら嬉しいし。どうやって今の位置にまで辿り着いたかを知ってもらいたい。たくさんの時間をかけて来たからであって、急に『コート上でショットが打ちたい、クレイジーなプレイがしたい』と思ってできることではないんだ。クラスを見てくれる子供たちが、僕のように努力すれば皆にもできるようになる。
引用:https://www.sportingnews.com/jp/nba/news/stephen-curry-to-teach-online-course-on-basketball-skills/h3cs56udsi0g1awpryri1qt8bmig
と語っています。いつからサービスを開始するのかはわかりませんが、非常に興味深いですね。
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まとめ
これまでNBAプレイヤーの破産の実例や、ビジネスマンとしての実例をお伝えして来ました。
先ほども記しましたが、引退した元NBAプレイヤーの60%が5年以内に破産し、90%が50歳になるまでに破産をしています。NBAには「50歳から高額年金を受け取る」ことができる年金制度があります。ただそれだけではこれまで莫大な出費を繰り返して来た人たちには足りずすぐに破産するでしょう。
そこでNBAは、選手の年俸の1%を強制的に徴収し、積立年金に加入させるという決定をしました。これである程度は破産申請も減ることでしょう。
しかし、それだけでは生活できない人も中には数多くいるのは間違いありません。中にはスポンサーと生涯契約を交わすプレイヤーや、引退後に会社経営に乗り出したり、マイケル・ジョーダンのようにチーム買収、チームのフロント入りするケースも増えるでしょう。
解説者という仕事もあります。全ての人間が会社経営に乗り出したり解説者になれるとは限りません。プレイヤーとして仮にうまくいっていたとしてもビジネスや他の仕事となると上手くいかないこともあります。
だからこそ、幼少時代にバスケットボールを必死になって練習して試行錯誤を繰り返してトッププレイヤーに上り詰めた時のように、引退後もビジネスや仕事のための「練習」「試行錯誤」が必要になってくるでしょう。
参考記事
- http://www.tsurao.com/archives/2015-07-02-1839339
[…] NBAプレイヤーの破産に関してはこちら→「50歳までに破産する確率は実に90%?!引退したNBAプレイヤーを待つ現実」 […]
[…] https://clutchtime.jp/nbaretirebankrupt/ […]
今の日本のスポーツ界の不祥事の連鎖にも共通していますよね。選手もコーチも協会も。
やはり『教育が不十分だから』破産や不祥事を起こしてしまう。日本のスポーツ強化のために教育が不十分なまま過剰な投資を行うことも不祥事の火種になりますね。そしてその教育が不十分なまま、指導者や協会の人になる。言うまでもなく、負の連鎖です。
やはり教育、それも『トータルパーソンプログラム』は大切ですね。それも長期的に行うこと。
あのアメフトの悪質タックル事件も、今では『災い転じて福となす』とも思っています。新しい取り組みを導入するチャンスだとも考えています。あらゆる論点が必要ですね。脳科学や心理学なども取り入れることが大事です。