NBA界において、オフシーズンのビッグイベントの1つと言えば「移籍市場」です。
シーズン中とも引けを取らないほどの注目を集める移籍市場は、実際のところオフシーズンの1度だけではありません。大きく分けると、2度のピークが訪れます。
今回は、僕個人も非常に大好きなNBAの移籍市場について、いつ頃にピークを迎えるのか、一体どんな仕組みがあるのかを紹介していきます。
目次
NBAの移籍市場はいつから?
NBAの移籍市場は、大きく分けて2つあります。夏のオフシーズンに行われる移籍市場と、冬のシーズンが始まってから行われる冬の移籍市場です。
夏のオフシーズンに行われる移籍市場は、動き出すのは主に7月1日のFA交渉が解禁されてからとなります。(※FAについては後ほど詳述します。)
冬のシーズン中に行われる移籍市場は、年明け1月から活発になり2月にピークを迎えます。
基本的には「夏の移籍市場」「冬の移籍市場」と言う分け方はしませんが、今回はわかりやすくするために「夏の移籍市場」「冬の移籍市場」この2つを使って説明していきます。
夏のNBAの移籍市場でよく目にする言葉
まずは、あらかじめ移籍市場でよく目にする言葉から、紹介していきますね。記事の後半で紹介している注目ポイント等では専門的な用語が飛び出しますので、あらかじめ学んでおきましょう。
サラリーキャップ
サラリーキャップは、簡単に言うと各チームの1年間の年俸予算です。サラリーキャップは、NBA側が各チームに「年俸の上限はこの金額ですよ」とあらかじめ提示してあります。
サラリーキャップがなければ、資金力のあるチームが高額な年俸でスタープレイヤーを獲得できるため、資金力のないチームに比べて優位になってしまう懸念があります。
そこで、各チームの戦力差を均衡に保ち、なおかつ各チームが年俸の未払いなどを防ぐために設けられているのがサラリーキャップです。
ラグジュアリータックス
ラグジュアリータックスは、日本語に訳すと「贅沢税」と言うものです。前述したサラリーキャップと深い関係があるのがこちらのラグジュアリータックスで、簡単に言ってしまうと、プレイヤーの総年俸がサラリーキャップを超過した際にリーグに支払うペナルティのことです。
サラリーキャップやラグジュアリータックスに関しては、以下の記事でさらに詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。
ルーキー契約
ルーキー契約は、その名の通りNBA1年目のルーキーが締結する契約のことを指します。
ルーキー契約は基本的に、ドラフト1巡目指名されたプレイヤーに関係してくるので、ワシントン・ウィザーズに指名された八村塁選手にも関係してくるのがルーキー契約です。
ルーキー時代に締結する契約形態であることから「ルーキー契約」と呼ばれていますが、NBA在籍2~4年目のプレイヤーに対しても「ルーキー契約」という言葉を使うことがあります。
ルーキー契約に関する詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
マックス契約
マックス契約とは、NBAが定めた最大の年俸での契約のことを指しています。
誰もがマックス契約を締結できるわけではなく、NBA側が定めた条件を満たしているプレイヤーのみ、マックス契約を締結する権利が得られるのです。
マックス契約に関する詳しい内容は、以下の記事を併せてご覧ください。
ミニマム契約
ミニマム契約とは、NBAが定めた最小の年俸での契約のことを指しています。
NBAでの在籍年数によってミニマムサラリー(最小年俸)が決められており、19-20シーズンのミニマム契約の年俸は以下の通りです。
ドラフトで2巡目に指名されたプレイヤーや、ベテランのプレイヤーが締結するケースが多いのがミニマム契約です。
FA
FAは、Free Agentの略称で、どのチームとも契約交渉をすることができるプレイヤーのことを指しています。
NBAの世界では、FAのことを「完全FA(UFA)」と「制限付きFA(RFA)」の2種類に分けて呼んでいます。詳しい内容は以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。
モラトリアム期間
モラトリアム期間は、猶予期間と言うものです。FAのプレイヤーとの契約交渉は7月1日から可能となるのですが、モラトリアム期間中は新規の契約を締結することができません。
モラトリアム期間中は口頭での合意のみ可能となっており、モラトリアム期間が明けた7月7日から新規契約を締結できるようになります。
モラトリアム期間は、別名「ジュライ(7月)モラトリアム」とも呼ばれます。
以前は7月10日23時59分までモラトリアム期間とされていたが、NBA選手会とNBAとの決まりによって、新たにモラトリアム期間は7月6日23時59分までとなった。
モラトリアム期間短縮のきっかけとなったのは、ダラス・マーベリックスと口頭で合意しながらも、後日マーベリックスとの口頭合意を翻し、ロサンゼルス・クリッパーズと再契約を結んだデアンドレ・ジョーダンの件。
冬のNBAの移籍市場でよく目にする言葉
ここからは、冬の移籍市場でよく登場する専門的な用語を紹介していきます。
トレードデッドライン
トレードデッドラインと言うのは、シーズン中に設けられているトレードができる期限のことを指しています。
例えば、2019年のトレードデッドラインは現地時間2月7日の午後3時、日本時間の2月8日午前5時でした。基本的にトレードデッドラインは、シーズンが始まってから16週目の木曜日と決まっています。
トレードデッドラインに関する詳しい内容は以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。
トレードエクセプション
トレードエクセプションと言うのは、チームが獲得するプレイヤーよりも、放出するプレイヤーの方が年俸(サラリー)が高い時に、得ることができるトレードにおける例外条項です。
基本的にトレードをした場合でも、サラリーキャップを超過してはならないので、トレードを行うプレイヤー同士で年俸(サラリー)を吊り合わせる必要があるんです。
ただ、場合によってはトレードをするプレイヤー同士の年俸が吊り合わず、どちらかのチームが獲得するプレイヤーの年俸が多くなるケースが当然出てきます。こちらはトレードが成立しません。
そんな時に、トレードエクセプションを利用してプレイヤーの獲得が可能になります。
シーズンを通してよく目にする移籍・契約に関する言葉
続いては、シーズンを通してよく使われている移籍や契約に関する専門的な用語を紹介していきます。
ウェイブ
ウェイブと言うのは、俗に言う「解雇」のことです。ウェイブはチーム側が一方的に行う解雇の形態のことを指していて、ウェイブをするとチーム側は契約時に定めた年俸を満額支払わなければなりません。
バイアウト
バイアウトと言うのは、俗に言う「解雇」のことです。上述したウェイブと同様に「解雇の形態」なわけですが、いくつか違いがあります。
バイアウトはチームとプレイヤーが双方の合意のもとで、行う解雇の形態です。
一方のウェイブは、一方的にチーム側が解雇をする形態ですし、年俸を満額支払わなければならないのですが、バイアウトは決められた割合の年俸を払うことになります。
また、バイアウトには1チームにつき1年に1回しかできないと言う決まりがあるのも特徴です。詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
10日間契約
10日間契約は、その名の通り10日間or契約後3試合に限定して締結する契約形態のことを指します。10日間契約は1人のプレイヤーに対し、1シーズンで2回締結することができます。
ただ、それ以降もプレイヤーを保持したい場合にはシーズン終了後まで契約を締結しなければなりません。
ちなみにこの10日間契約は、基本的には毎年1月から締結することが可能です。
2way契約
2way契約は、NBAのチームと、NBAのチームが提携しているGリーグのチームとを行き来できる契約形態のことです。新しい契約形態で、17-18シーズンから導入されるようになりました。
日本では、渡邊雄太選手が締結したことで広く知られていますよね。2way契約を締結したプレイヤーは、シーズン中45日間だけNBAのチームに帯同することができます。
Gリーグのチームがオフシーズンの場合には、45日間にカウントされることなくNBAのチームに帯同できる。
大物プレイヤーの動向が注目されるNBAの夏の移籍市場
移籍市場でよく使われる専門用語がわかったところで、ここからは夏の移籍市場に関して紹介していきます。
夏の移籍市場は、いわゆるFAのプレイヤーたちの獲得合戦が行われる期間です。FAとなるプレイヤーたちとの契約交渉は基本的に現地時間7月1日から解禁されるため、7月から本格的に夏の移籍市場がスタートします。
厳密にはモラトリアム期間が明ける7月7日から、新しい契約を締結することができるようになります。FA交渉が解禁される7月1日0時から7月6日23時59分までは、口頭合意のみ可能です。
FA交渉ではなくトレードは、7月よりも前に行うことができます。(トレードが正式に成立するのは7月に入ってからです。)
ロンゾ、イングラム、ハートはペリカンズへ。。。😢 https://t.co/K0pgkchGrN
— Shuichi Shinozaki | 篠崎修一 (@bskbsketter) June 16, 2019
プレイオフを目指すチームのトレードによるNBAの冬の移籍市場
冬の移籍市場は、2月の上旬に設けられている「トレードデッドライン」直前に最も盛り上がりを見せます。
この「トレードデッドライン」付近は、全てのチームが40~50試合ほどを消化しており、徐々に徐々に各カンファレンスの順位が上位と下位で分かれてきます。
その中で、基本的にはプレイオフ進出を目指しているチームや、優勝を目指しているチームが、補強のためにトレードを敢行するのが一般的です。
夏のNBAの移籍市場の注目ポイント
NBAの数あるビッグイベントの中でも、個人的にとても好きなのがこの夏の移籍市場です。夏の移籍市場にはどんな注目すべきポイントがあるのか、紹介していきますね。
魅力たっぷり!大物FAの移籍
夏の移籍市場の最大の目玉は、FAになった大物=スーパースターの移籍に他なりません。
2018年の夏の移籍市場であれば、”キング”ことレブロン・ジェームズがロサンゼルス・レイカーズに移籍したり、デマーカス・カズンズがゴールデンステイト・ウォリアーズに移籍したりと、大物の移籍が相次ぎました。
レブロンがレイカーズに移籍
↓
「一緒にプレイしたい!」
KCP、ランス、マギー、ロンドと契約。
↓
「レブロンとやるために復帰したい!」ボッシュが復帰を示唆。
↓
「レブロンとやりたい!」と言うハワード。レブロンと言う男の魅力がレイカーズにとんでもない追い風を吹かせている。 pic.twitter.com/Og7TkW1Do7
— Shuichi Shinozaki | 篠崎修一 (@bskbsketter) July 3, 2018
2019年の夏も大物FAが移籍市場に出てきますので、大いに盛り上がるでしょう。
ベテランの去就にも注目!
大物FAだけではなく、ベテランFAの去就にも注目です。10年近くNBAで活躍し続けているベテランは、優勝を目指すチームのラストピースになったり、チームの若手を指南する役が任されることが多々あります。
長年NBAで活躍してきているからこその、経験値やバスケIQが、チームに新たな力をもたらしてくれるのです。
また、ベテランが契約をするときには先ほども紹介した「ミニマム契約」と言う契約を締結するのが一般的です。
チームのサラリーキャップには計上されないため、ベテランの獲得もチーム運営・チーム力向上に大いに関係してくるんですよ。
冬のNBAの移籍市場の注目ポイント
夏の移籍市場の注目ポイントがわかったところで、冬の移籍市場の注目ポイントも紹介していきます。
プレイオフを目指すチームの戦力補強
まず何と言っても、プレイオフや優勝を目指しているチームの戦力補強に注目が集まります。
例えば2019年のトレードデッドラインでは、当時リーグの中でも上位だったトロント・ラプターズがスタメンのプレイヤーを放出してまでも、補強に乗り出しました。
グリズリーズとラプターズ間でトレード合意。
【グリズリーズ】
マーク・ガソル⇅
【ラプターズ】
ヨナス・バランチュナス
デロン・ライト
CJ・マイルズ
2024年ドラフト2巡目指名権 pic.twitter.com/jdSTjO4us9— cata.@NBA (@ct_nba) February 7, 2019
マーク・ガソルを獲得したラプターズは、その後2019年のNBAファイナルで優勝を果たしており、積極的なトレードが功を奏した形となりました。
ベンチプレイヤーにも白羽の矢が立つ
上述したマーク・ガソルは、移籍前のチームでもスタメンを務めていました。ただ、戦力の補強はチームのスタメンを獲得するだけではありません。
ベンチから効率よく得点を稼ぐことができるプレイヤーにも、トレードの話が持ちかけられます。
フッドは今シーズン35試合で、
16.7PPG
3P% 38.6%
FG% 40.9%
eFG% 50.3%
とFG%以外はキャリアハイ。ベンチから17点近く稼げるのはデカいなぁ。需要ありあり。
— Shuichi Shinozaki | 篠崎修一 (@bskbsketter) January 20, 2018
2018年のトレードデッドラインで、クリーブランド・キャバリアーズへ移籍したロドニー・フッドは、移籍前のチームでは控えから1試合平均16点も稼いでいたのです。
当時キャバリアーズはプレイオフの進出を目指していましたし、レブロン・ジェームズ以外の点取り屋も欲していたため、ロドニー・フッドに白羽の矢が立ったのです。
海外サッカーではあるがNBAにはない移籍市場の基本知識
ここまではNBAの移籍市場に関する紹介をしてきましたが、中にはNBA以外のプロスポーツの移籍市場に関する知識を、そのままNBAに当てはめてしまう人もいるでしょう。
どのスポーツも同じだと思ってしまっても仕方ないですよね。
そこでここからは、海外サッカーを引き合いに出し、海外サッカーにはあってNBAにはない移籍市場の知識を紹介します。
移籍金
海外サッカーにはある「移籍金」がNBAの場合には存在しません。移籍金はチームからチームへ支払うお金のことを指します。
海外サッカーの場合、チームAに所属するプレイヤーを獲得したいチームBは、チームAが提示した移籍金を支払うのが一般的です。シーズン中でもオフシーズンでも、プレイヤーの獲得には移籍金を支払う必要があります。
契約解除金
海外サッカーには「契約解除金」が存在していますが、NBAには存在していません。契約解除金は、上述した移籍金とは別で支払われることになっているのですが、プレイヤーの在籍しているチーム側が契約解除金を設定します。
契約解除金は、プレイヤーの流出を防ぐために設けられているお金のことで、他のチームへ移籍することを防ぐために契約解除金を設定しています。
例えばチームAのプレイヤーXに契約解除金が1000万€設定されていたら、プレイヤーXを獲得したいチームBは契約解除金の1000万€を支払う必要があるんです。
上記「移籍金」と「契約解除金」は、海外サッカーに慣れ親しんでいる人からするとごく一般的ではありますが、NBAの世界では存在しません。
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まとめ
NBAの移籍市場は、大きく分けるとオフシーズンの夏場と、シーズン中盤の冬場に分けられます。特に夏の移籍市場では大物FAの移籍が実現するため、大いに盛り上がりを見せます。
僕自身は、プレイヤーの移籍を見ながら、「このチームはこんな戦い方も出来るな」ですとか「〇〇と〇〇のコンビプレイが楽しみだな」と、シーズンの開幕に向けて妄想を膨らませるのが楽しみの1つです。
シーズン中の試合ももちろん楽しんでもらいたいのですが、オフシーズンの移籍市場も盛り上がりますので、ぜひ注目してみてください。