「保護者の理不尽すぎる意見の押しつけにもううんざり」
「コーチとコミュニケーションが取れないし、子供はプレイしにくそうにしてるし、移籍も1つの選択肢なのかな」
この記事は、今のミニバスチームから移籍することを考えている保護者の方へ向けて書いています。
スポーツの楽しさを知ったり、仲間を思いやる気持ちを育んだりするという、大きな目的があるのがミニバス(バスケ)をはじめとするスポーツですよね。
そんな学生スポーツ界ですが、近年は指導者の暴力や保護者同士の対立などが大きな問題として浮かび上がっており、必ずしも先に挙げた大きな目的を果たせているとは言えない現状です。
学生スポーツの中でも特に重要であるのが、小学生のスポーツ。心も身体もまだまだ未熟なこの年代で受ける「スポーツ」への印象は、後々に大きな影響を与えてきます。
ミニバス(U-12)においては、2019年から移籍に関するルールが改定され自由に移籍をすることが可能となったため、より子供たちがプレイしやすい環境へと移籍させる考えを持つ保護者も増えてきているのでしょう。
おそらく、あなたもその1人であると思います。今までなぜ移籍が自由ではなかったのか、そして今回なぜ自由になったのかという背景なども踏まえながら、ミニバスの「移籍」に関して深掘りをしていきます。
目次
なぜ移籍のルールが改定されたのか
そもそも2019年度から、なぜ移籍に関するルールが改定されたのでしょうか?
日本バスケットボール協会(以下、JBA)の資料によると、以下のように書かれています。
以下 2 点の主な事情を踏まえ、U12 カテゴリー部会では登録および移籍について検討を重ね、時代背景や 環境に即した規程とするための改定案をまとめました。
1.少子化の影響
【課題点】 単一校・単一チームや、近隣校で合体したチームでは選手を集めることが難しくなっている、等
【改定後】 一定の条件の下での登録の自由を容認し、希望するチームへの加入を可能とする。 ※U12 カテゴリー登録運用細則を定める。2.移籍ができないことの問題
【課題点】 暴⾔・暴⼒・人間関係等のトラブルなどの問題があっても、移籍が制限されていたため、我慢して続 けるかバスケットボールを辞めるかのどちらかしかなかった、等
【改定後】 特別な事情があれば、チーム間の移籍を認める。 ※U12 カテゴリー移籍運用細則を定める。注)今回の変更は、特別な事情がある選⼿の移籍を認めるもので、この規程を悪⽤して強化目的や勝利 至上主義のもとに移籍することを促すものではありません。
引用:JBAの資料
少子化による影響や、移籍ができないことによって生まれる弊害などを踏まえた、ということになりますね。
少子化への対策は登録人数の規定変更にも現れている
「少子化への対策」については、今回のメインテーマでもある移籍以外にも、「試合の出場人数の改定」にも現れています。
2019年に実施されたルール変更によって、ミニバスは従来の「登録競技者数が10人未満の場合には試合にエントリーできない」から、「登録された競技者が10名未満のチームに対して、8名による試合成立を認める。」こととしたのです。
「8名でも試合成立を認める」ことに伴い、試合への出場ルールも細かな部分で改定が加えられています。
詳しい内容が知りたい方は「【これでOK】ミニバスのルールを完全網羅。一般との違いは7個だけ。」こちらの記事をご覧ください。
移籍ができないことによって生まれる弊害
2018年度までは、移籍は以下の項目に該当した場合に認められてきました。
1.特別な事情(転校、チームの統廃合、新設等)が ない限り、チーム間の移籍は認めません。
2.転校の場合、これまでの所属チームにとどまることもで きます。
3.チームの統合で新しいチームができた場合は移籍 (移籍元チームであれば残留)を認めます。
4. チームが廃部になった場合は、適切な近隣チームに移 籍することを原則とします。
引用:JBAの資料
また、各県の協会が定めた規定などを満たしていないと移籍ができないようになっていたのです。
「移籍ができない」ことで、選手はそのチームでプレイすることを我慢したり、バスケットボールを辞めてしまったり、保護者も親同士の付き合いで我慢したり、と様々な弊害が巻き起こっていました。
これは、選手にとっても保護者にとっても、精神衛生上よくない状況であると言えるでしょう。また、バスケットボールの普及を目的とするJBAにとっても、よくないことでした。
2019年に改定されたミニバスの移籍に関するルール
2019年度から移籍に関するルールがなぜ改定されたのかを知ったところで、続いては大きく変わった移籍に関するルールについて、JBAの資料をもとにご紹介します。
移籍に関する改定の中でも特に注目して欲しいのが、以下3つのポイントです。
- 人間関係によるトラブルが原因となる移籍がルール化された
- 移籍の回数制限がない
- JBAが定めた規定に則り、各県の協会が新たに規定を設けることはできない
では、それぞれの項目をさらに詳しくご紹介します。
人間関係によるトラブルが原因となる移籍がルール化された
新たなルール改定に伴い、人間関係によるトラブルが原因となる移籍が、容認されることになりました。
とは言え、2018年度までの移籍のルールの中では『1.特別な事情(転校、チームの統廃合、新設等)が ない限り、チーム間の移籍は認めません。』このようにも書かれています。
以前のルールの中でも、人間関係によるトラブルは特別な事情のうちに含まれていたとも考えられるでしょう。
ですので、人間関係によるトラブルが原因となる移籍が、明確にルールとして定義された、と言い換えたほうが正しいかもしれません。
「保護者の理不尽すぎる意見の押しつけにもううんざり。」
「コーチが上手い子ばかりを贔屓して、うちの子を使おうとしない。しかも、それを「上手くない選手は使わない」のように、パワハラとも取れる発言をしている。」
こういったトラブルに見舞われたときには、移籍を選択することもできるようになったのです。
移籍の回数制限がない
新たなルール改定に伴い、移籍の回数制限は設けないと定められました。
移籍の回数制限がなくなったことで、1度移籍をした場合にまた人間関係によるトラブルに見舞われたとしても、再びチームを移籍できるようになったのです。
ちなみに、2018年度までのミニバスのルールにおいては、チームを組む場合には以下のような条件に適用することが求められていました。
(1) 単一学区児童で構成されたチームを原則とす る。 (2) 単一学区児童のみでは活動できない場合のみ 近隣の同一条件校との合体(連合)を認め る。
引用:JBAの資料
そのため、基本的には「学区内のチーム」に所属する必要があったのです。
そして、移籍によっても基本的には「学区内のチーム」に所属しなければならなかったので、実質的には複数回の移籍ができない状況でした(※学区内のチームは限られてくるため)。
しかし、2019年度からは以下の条件を満たしていれば、どのチームにも所属することができるようになりました。
1.競技者の主たる居住地から当該チームの主たる活 動場所まで安全に無理なく集合して活動し、活動 後は安全に無理なく帰宅できる範囲のチームであ ること。
2.競技者の移動中の安全の確保について、当該競 技者の保護者が責任をもって⾏える環境であるこ と。
引用:JBAの資料
そのため、学区に囚われることなくチームを探すことが可能となったのです。
移籍をする際も「子供のためを思うと、学区内だから前のチームの子と頻繁に会うよね。。。」といった心配をする必要が少なくなります。
JBAが定めた規定に則り、各県の協会が新たに規定を設けることはできない
新たなルール改定に伴い、移籍のルールはJBAが定めた規定に則る必要があり、各都道府県の協会が新たな規定を設けられないことになりました。
2018年度までは、各都道府県の協会が規定を設けている場合もあり、全国的に統一されてはいませんでした。
そこで移籍に関しては、JBAが定めた規定以外には各都道府県の協会が新たな規定を設けられないようにし、全国的な統一が行われたのです。
一定の条件が整えば、自由に登録・移籍ができる
2019年度に新たに改定されたルールによって、一定の条件が整っていれば自由に登録・移籍ができるようになりました。
ただし、プロによくある移籍とは違い、ミニバスの場合には「強いチームに行きたいから」という理由での移籍は認められていません。
では実際にどの場合にチームの移籍が認められるのでしょうか?規定をもとに紹介します。
転居あるいは人間関係のトラブルがあったときに移籍可能
JBAの資料には、移籍ができる場合の条件として以下の内容が記載されています。
(移籍の条件)
第 4 条この細則の対象となる競技者の移籍は、次の 1.2.にあげる「特別な事情」があれば認める。
1.転居
2.人間関係等のトラブル引用:JBAの資料
あなたと同じように、子供を移籍させようかどうか迷っている保護者は、「移籍をしても試合には出られないぞ」と脅された経験があったり、理不尽な要求を突きつけられたりと、人間関係でかなり悩んでいるようです。(Twitter上の声)
中には「子供から移籍したいと言われた」ことで移籍を検討している保護者もいるようでした。
基本的に考えて、保護者は子供たちがのびのび楽しくプレイできるよう努めるべきですが、その内容を理解しておらず身勝手な行動を取る保護者も一定数いるようです。
ただし、「気に入らないから移籍したい」だとか「強いチームに行きたいから移籍したい」などの理由の場合、移籍は認められません。
JBAが、Q&Aでも回答をしています。上述した2つのどちらかに該当しなければ移籍は認められないので、完全に自由というわけではないのです。
移籍を申し出たら、チームは引き留められない
基本的に、「転居」あるいは「人間関係等のトラブル」に該当すれば、移籍元チームは移籍したいという選手を引き留めることはできません。
ですので、ルール上は「転居」あるいは「人間関係等のトラブル」に該当していれば移籍をすることは可能なのです。もちろん、中には引き留めようとする保護者、コーチもいると思われます。
また、移籍したいチームを見つけて移籍したいという旨を申し出た場合、移籍先チームは申し出を拒否することはできません。
だからと言って、元々所属していたチームの悪口などを言って移籍を申し出るのは、移籍先チームからの、あなたやあなたの子供に対する心象を悪くしてしまいかねませんので、節度を保った対応が必要です。
移籍によって起こり得る問題
現在あなたの子供が所属しているチームのことは、僕よりもあなたの方がより詳しくわかっているでしょう。
ですので、当然認識しているものとは思いますが、改めて移籍を行うことによって起こり得る問題について、確認しておくことをおすすめします。
事前に認識しているのとしていないのとでは、心理的なストレスも大きく変わってきます。
移籍によって今の状況が改善される可能性は大いにありますが、その分ストレスや負担が、あなたにも子供にものしかかることを理解しておきましょう。
プレイヤー同士の対立
移籍するにあたっては、以下の条件を満たしていれば基本的にどのチームにも移籍することでができます。
1.競技者の主たる居住地から当該チームの主たる活 動場所まで安全に無理なく集合して活動し、活動 後は安全に無理なく帰宅できる範囲のチームであ ること。
2.競技者の移動中の安全の確保について、当該競 技者の保護者が責任をもって⾏える環境であるこ と。
引用:JBAの資料
とはいえ、元々所属していたチームから近いチームに移籍することになるでしょう。この場合、公式戦や練習試合で対戦することがあります。
移籍元のチームと出会った時に、あなたの子供が以前所属していたチームの選手から、執拗なファールを受けるケースもあり得ます。
子供達が移籍に対してどのように考えているかはわかりませんが、中には「裏切られた」と感じてしまう選手もいるかもしれません。
保護者あるいはコーチとの対立の場合、子供同士は悪くないので、移籍しても仲良くできるかもしれません。
しかしながら、子供から移籍を申し出てきた場合や、選手同士のトラブルが原因の場合には、顔を合わせた時に対立する可能性もあるでしょう。
保護者同士の対立
TwitterやFaceBookなどから、なぜ移籍を考えているのか理由を探ってみると、保護者同士の対立がかなり多く挙がっていました。
理不尽な要求を突きつけられたり、移籍しても試合には出られないぞと脅されたり、保護者同士の対立がきっかけで移籍を決断するケースは多くあるようです。
JBAの定める条件に則った上での移籍だとしても、以前所属していたチームの保護者との対立の溝は深まったまま。
保護者との付き合いが原因で移籍を選んだのであれば、関係が修復される可能性はほぼ0と言えるでしょう。
保護者との付き合いが原因の場合は、例えば試合会場ですれ違った時に何かを言われたり、話しかけようとしたのに無視をされたり、などのケースも考えられます。
「大人になりきれていない大人」は、世の中に多くいますし、全てを円満に終わらせることはできないと考えておいた方が、心理的なダメージは少なくなるでしょう。
努力をしたのにも関わらず、移籍をよしとしない保護者がいる場合には、こちら側は無視をするのが得策です。
精神的ストレス
あなたにとっても子供にとっても、移籍は精神的なストレスを抱えることになるでしょう。
移籍の話をするようになってからは、チームの練習に参加し続けるのは複雑ですし、今まで苦楽を共にしてきたチームメイトや意見が合う保護者との別れは、想像以上にキツくも感じられるでしょう。
また、転校などではなく監督・保護者とのトラブルによって、小学校は変わっていないのにチームを移籍した場合には、子供が小学校で「なんで移籍するの?」「どこに行くの?」と聞かれることもよくあるでしょう。
子供にとっても精神的なストレスを感じる原因になるのが移籍です。
相手も悪気があって「なんで移籍するの?」「どこに行くの?」と聞くわけではないはずですから、どちらが悪いなどということではありません。
あなたも子供も非常に大きな精神的ストレスを抱えることになるでしょう。こまめなケアを欠かさず行う必要があります。
移籍をする場合の手続き
もし移籍を決断することになったら、所属しているチームがある都道府県のバスケットボール協会を介して、手続きを行う必要があります。
JBAの公式ページの中から「移籍申請書」をダウンロードすることができますので、その紙に必要事項を記入して、所属しているチームがある都道府県のバスケットボール協会に提出しましょう。
移籍ができるかできないかは、移籍申請書を提出してから都道府県のバスケットボール協会が審査を行い、おおよそ2週間程度で結果がわかります。
詳しい手続きに関する内容は、JBAの公式ページをご確認ください。
移籍の自由化に伴い考えられるミニバス界への影響
今回のルール改定に伴い、少なからずミニバス界には影響が起きてきそうです。考えられる影響を、僕なりにまとめてみました。
あなたと子供が決断する「移籍」によって、ミニバス界は大きく前進する可能性もあると、僕は感じています。
チーム・指導者の在り方が問われる
選手が移籍することは、移籍した保護者・子供から「居心地が悪いチーム」「理不尽な要求を突きつけてくるチーム」という印象を抱かれてしまうでしょう。
移籍が容認される理由の「人間関係等のトラブル」からもわかるように、移籍を決断したということは、チームに良い印象を持っていない可能性が高いと言えます。
そして、ミニバスの場合には中学・高校・大学に比べても、保護者が介入してくるため、保護者や指導者次第でチームの色が大きく変わります。
ですので、保護者・指導者をはじめとするチーム全体の在り方が問われると言っても過言ではないでしょう。子供たちのためのチームなのに、それを大人が壊してしまうのはもってのほかですよね。
ぞんざいな扱いをするチーム・指導者は淘汰されていく
チームによっては、大人が「移籍したいならすればいい」のような態度をとるケースもあるかもしれません。
仮に保護者や指導者に非があったとしても、それを認めないような大人がいるチームは今後淘汰されていくでしょう。
スポーツ少年団であっても、会社と同じように「人間」が財産です。試合に勝つ喜びを分かち合い、時には悔しさを共有できるのも、人間だからこそです。
ぞんざいな扱いをするような大人がいるチームは、例え歴史があったり強かったりするチームでも、淘汰されていくかもしれません。
まとめ
ミニバスのチームを移籍する場合は、「転居」あるいは「人間関係等のトラブル」などの特別な事情がある時に限ります。
SNSなどの反応を見ていても、「人間関係等のトラブル」が原因で移籍をしたケースは多くあるようです。
この内容だけを見てみると、移籍自体にネガティブな印象を持ってしまうかもしれませんが、環境を変えたことで子供に変化が起こったケースも多々あるようでした。
のびのびとプレイしていたり、「バスケが楽しい」と言ってきてくれたり、移籍をして環境を変えてあげることは、子供にとってもあなたにとってもプラスに働くことだってあるのです。
社会生活を送る上では、理不尽なこともよくあるものです。しかし、その中でずっと生活を送るのは精神的にも辛いですよね。それはきっと、あなただけではなく子供も同じであるはずです。
だからこそ思い切って移籍を選ぶのも、良い選択肢と言えると思います。「環境を変える」ため、と前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。ひいては、その決断がミニバス界に良い影響をもたらすかもしれません。
この記事が、あなたの一助になれば幸いです。